俺様先生と秘密の授業【完全版】

「……直斗」

「俺は、何も出来なかった。
 早紀の希望を叶えて心を救ってやることも。
 運命の時間に、すぐそばを単車で走っていたのに、早紀の事故を防いでやることも……!
 結果は、どうだ?
 ウチと天竜組のメンバー合わせて、死亡、重体者が十人超え?
 ……冗談じゃない!」

「直斗……」

「俺は、あの大惨事の中で、ただ救急車を呼び。
 だんだん冷えてゆく早紀のカラダを、抱きしめてやるくらいしか出来なかった……!
 最初(はな)っから自分は、何も出来ねぇヤツだとは、思ってたが、あの時は、自分の無力感に、吐きそうだった」

 まるで。

 今でも、血を吐きそうなほどのココロの痛みが、見えた気がした。

 直斗は、今でも、そんな思いを抱いて、生きてたんだ……!

 だから、直斗は。

 それから、すぐに沈黙の狼から引退し。

 兄貴と、進む道を違え……

 数ある職業の中から、教師の……それも、保健室の先生。

 ……養護教諭になったのかもしれなかった。

 なぜなら。

『保健室』には、学校の中で、いろんな問題を抱えた生徒が集まって来ることが多いから。