「その薬は、38.5度を超えるまで、飲ませるな。
 まだ、熱が上がりきってないうちに飲むと体温を下げすぎるし。
 一度飲むと、時間を開けないといけないから、本当に必要になったとき、困ることになるぞ?」

 そう言った直斗の言葉に、兄貴は、噛みつくように、言った。

「愛莉の熱が、これからも、上がるって言うのか!?」

「おそらく」

「じゃあ、やっばり今のうちに、薬を飲ませておいた方が、良いじゃないか!
 これ以上熱が上がったら、愛莉が死んじゃうかもしれない!!」

「……死なねぇよ。
 それよりお前、ヒトの話、聞いてたか……?」

 多分兄貴は、まったく聞いてない。

「薬を飲ませないと、心配なんだ~~」と、半分涙目のまま、訴える兄貴に。

 なんでコイツは、愛莉が絡むとボケるんだ、と、直斗は口の中で呟いて、おおげさにため息をついた。

「俊介の他に、今日、愛莉の面倒をみられるヤツは?」

「居ないよ……って言うか。
 なんで、オレがいるのにそんな奴が必要なんだ!」

「病人の耳元で、叫ぶな。
 お前だけだと、愛莉の熱がちょっと上がっただけでも大騒ぎになりそうで嫌なんだ」

 と、直斗は言って頭をがしがしと掻くと。

 とんでもないコトを言った。

「……俺、やっぱり、今日はここに泊るコトにする」


 ……って?

 本気で言ってる!?