そ、そうだ!

 早くお薬あげなくちゃ!

 って。

 兄貴は、不器用そうに、紙袋から熱冷ましを取り出して、銀のシートを破ろうとした。

 と。

 あたしの部屋の扉が、がちゃり、と開いて、氷枕を抱えた直斗が、入って来た。

 あれから、直斗と、岸君も混ざって、病院には行ったものの。

 狼の解散と一緒に、岸君も追い出されたのに。

 直斗だけはちゃっかり、家までついて来た。

 ……ん、で。

 いつも、身の回りのことを手伝ってくれる家政婦さんを断ったクセに。

 あたしの側から離れたくないって、我がままを言った兄貴の代わりに。

 何だか、直斗は、雑用係を引き受け、今は家の厨房から、氷を貰って来たんだ。

 直斗は散々、水野小路家に出入りしているから、あたしの部屋から厨房までの案内はいらないし。

 屋敷中うろうろしている、使用人も、お父さんに用事のある怖いお兄さん達も。

 直斗なら、スルーパスだったから。

 勝手知ったる他人の家~~みたいに。

 自分で勝手に動き回ってる。

 その直斗が、入って来ると。

 兄貴の手元を見るなり、止めた。

「まてまてまて」

「なんだよ」