結局それから、熱が、出た。



 傷ついた手を掴まれたり、振り回したり。

 全然傷を大事にしてなかったから、ってコトと。

 ずっと、緊張してたコトが原因らしい。

 うんと小さなトキ以来、出たことのなかった38度超えに。

 体温計を握り締めていた兄貴が、泣きそうな声を出した。

「愛莉ちゃ~ん……」

 兄貴のこんな情けない声なんて、絶対他の狼に聞かせられません。

 あたしは、ちょっと笑って、なんとか声を出した。

「大丈夫~~」

 ……けど。

 やっぱり実はあんまり、調子良く無い。

 頭が、ズキズキ痛んで、ほわ~~っと意識が、遠くなったり、近くなったりしている。

 それに、気持ち悪い汗が。

 じわっと滲んだり、乾いたりして。

 布団を掛けてても、寒かった。

 もしかしたら、もっと熱が出るのかもしれない。

「愛莉ちゃん、お薬、飲める?」


 普段は、バイクのハンドルを握っているか。

 拳(こぶし)の形にしたら、凶器になりかねない兄貴の手が。

 体温計をテーブルに置くと、代わりに水の入ったコップと、熱冷ましを抱えて、おろおろしていた。