俺様先生と秘密の授業【完全版】

「沈黙の狼(サイレント・ウルフ)の現役特攻部隊のミナサマじゃねぇか。
 最速のチームの中でも、一番早い部隊とは言え、もうここまで来やがった!
 ……おっかねぇ」

 早瀬倉先生は、そう言うと、ぶるるっと身を震わせた。

「ナニ言ってるのよ。
 自分だって、ムカシは、兄貴と一緒にこのチーム引っ張って、走ってたんでしょうが」

 早瀬倉先生の反応が、あまりに大げさだったから。

 状況を忘れて、思わず突っ込むと。

 先生は、だから知っているんだ、と指を振った。

「普通、チーム組んで走る族は。
 派手な音を鳴らしたり、下品だけど目立つ改造して公道を暴走するだろ?
 あれで、一般車を蹴り散らかしているから。
 実はそう、事故ることはねぇんだよ」

「うん」

「だけど、沈黙の狼っていうチームは。
 基本色は黒。
 それに無音っていう掟がある上、関東一円では一番の速さを誇るから。
 危険度はもっと増すんだ。
 普段は、チーム全体の先頭を走って露払いをする『特攻部隊』っていうヤツは、その中でも一番危ねぇ。
 腕が良くなければ、すぐに事故るし。
 もう、何人も死んだ奴がいる」

「……うん」

「莫迦なヤツらだと思うが、走りに文字通り、命賭けてるからなぁ。
 普段から命がけな分。
 ヤツらの命に対する考え方が、世間一般のミナサマより軽いんだ。
 上のヤツの命令は絶対だし。
 走り以外の喧嘩や、もっと無茶なコトだって、平気でヤルから怖いんだよ」

「……」