辺りを、しん、と水を打ったような静寂が押し包む。 あたしたちの他に、四十人の狼たちが、確かにここにいるのに。 その名の通り、誰もが沈黙し。 少しの間、海岸を洗う波の音の他、何も聞こえてなんて、来なかった。 岸君は、今まで誰も……多分、直斗でさえ。 言ったことのない事を、兄貴の前で、言ったから。 「オレ。 愛莉さんが、好きです」 ……なん……て……