俺様先生と秘密の授業【完全版】

「……そっか。
 加月さんも、いろいろ苦労しているんだね」

 そんな風に、しみじみと言った岸君に。

 まあね、って笑って。

 じゃあ、病院行くから、って手を振った。

 正直。

 いろんな事がありすぎて、だんだん立ち話も辛くなって来た所だった。

 車に乗れば、少なくとも、座れる。

「直斗も、岸君もありがと。
 なんだか、大騒ぎにしちゃってごめんね」

 そう、振ったあたしの無事な方の手を。

 岸君は、そっと、包むように掴んだ。

「岸君……?」

 戸惑うあたしに、岸君は言った。

「私も、病院に行って良い?」

 ……え?

 何を言い出すんだろう!

 びっくりしているあたしに、岸君は言った。

「だって、その傷。
 私のためについたようなものじゃない。
 そんなに、ひどいのなら、私が一緒に行って当然だし。
 ……出来れば……
 加月さんのこと、もっと知りたいよ」

 岸君の目は真剣で。

 あたしを心配してくれたことは、とても嬉しかった。

 けれども。

 言うタイミングが最悪だった。

 あたしの側で聞いていた。

 ダークガーディアンと言われた。

 兄貴の目つきが、変わった。