俺様先生と秘密の授業【完全版】

 そんな、岸君の質問に、兄貴は整った方眉をひょい、とあげた。

「オレの名前を知ってるんだ?
 お前も、こっち側の人間か?
 ……でも、沈黙の狼ではないな」

 いや、むしろ。

 その紅いズボンは、天竜組の人間みたいだね。

 なんて。

 冗談とも本気ともつかない兄貴の言い草に、あたしと直斗は、顔を見合わせた。

 そ、そうよ!

 話題変えなきゃ!

「……岸君。
 あのね、あたしたち本当に兄妹、なの。
 色々な事情で、血は四分の一しかっなかって無いけど」

「四分の一、って従兄妹ってこと?」

「うーん」

 現実は、もっと複雑だけど、面倒くさいから、そういうコトにしておこう。

「うん。
 でも、戸籍上は、ホントに兄妹。
 本当は、あたしも水野小路って名のったほうがいいのかもしれないけど『加月』って名字のが、慣れてるし」

 それに、水野小路、なんて。

 一度聞いたら、忘れられないような。

 やくざ同士の抗争事件で、時々テレビにも出る派手な名字を名乗ったら。

 普通に学校なんて行ってられないからだ。