俺様先生と秘密の授業【完全版】

「オレは、加月さんのクラスメートで……」

「俺が見つける前に、絡まれていた愛莉を、コイツが助けてくれたんだ」

 岸君には、余計なことをしゃべらせず、割って入った直斗の説明に、兄貴は機嫌良く頷いた。

「そうか。
 妹が世話になったな。
 ありがとう」

「え……っと……」

 その。

 他人相手にしては、穏やかな表情と。

 しかも、かなり素直に出て来た感謝の言葉に。

 緊張していた岸君は、かえって戸惑ったみたいだった。

 ……別に、兄貴は、普通の事を普通に言っているだけなのに、ねぇ。

 族やら、職場の権力が、一般社会では、関係ない事を知っているだけなのに。

 兄貴が挨拶をすると、大抵のヒトが驚く。

 けれども、岸君には、もっと、驚く事があったらしい。

「……えっと。
 加月さんが……水野小路さんの……妹、さん、なんですか?」