海岸にやって来るバイクの数は、どんどん増えているのに。
息を飲むような沈黙だけは、相変わらず、広がっていた。
そして、しびれるような緊張感の中。
『それ』が、集会所にやって来た。
大型の高級バイクを、先頭に立て。
後ろに三台のバイクをお供につけてる、大型リムジンだ。
整列した、バイクの中央にそれが止まり。
ライダーたちが次々に、フルフェイスのメットを脱いでゆく様子を見て。
岸君が、のどの奥で唸る。
「トップ4ー1の吉住が、大総長の上着を着て先頭を切ってるのに。
残りのトップ4と一緒に、雑魚扱いされてる。
あの車には、どんなエラいヤツが乗っているんだ……!」
もちろん。
それは、あたしの兄貴以外になく。
白手袋の運転手が、リムジンの後部座席をあけると。
そこから、長い髪を鬱陶しそうにかきあげた、兄貴が出て来た。
それを見て、岸君が乾いた声をあげる。
「やっぱり、とんでもないヤツが出て来たね。
沈黙の狼を裏で飼ってるヤクザの若頭じゃないの?
普段は、子供の遊びには、付き合わないって、ほとんど族には顔を出さないはずなのに……
今週は、特別ってこと?
それにしても、たかがチームメイトの知り合いのお迎え、に出てくるなんて……」
ありえないって、首を振る。
「……たしか、名前は……
水野小路 俊介(みずのこうじ しゅんすけ)って言ってたかな……?」



