俺様先生と秘密の授業【完全版】

「そこらへんにしとけ。
 イヤでもすぐに判ることなのに、愛莉を追い詰めるな。
 俺が知る限り、愛莉は誰の女でもない。
 ……今のところは」

「今のところってっ!」

「いちいち熱くなるなよ、岸。
 それより、お前、天竜組の縁続きだろ?
 ここを無事に帰りたかったら、余計な事は喋らず、おとなしくしておけよ?」

 そして。

 愛莉も岸の単車から、降りといた方がいい、っていう直斗の言葉に、あたしも素直に、頷いた。

 けれども。

 単車から降りようとしたあたしの手を、岸君が掴む。

「加月さんが、誰の女でもないのなら。
 このまま、乗ってればいい」

「ごめん、それは……」

 やめておいた方がいいって言うのは、あたしにでもわかる。

 狼じゃない、知らない男(ヒト)の単車になんて乗ってたら。

 兄貴がどんな反応をするのか、考えるのも、恐ろしかった。

 あたしの考えに、直斗も、同感だったらしい。

 岸君の手を払うと、さっさと単車からあたしを下ろす。

「ダメだ。
 お前、自分の族としての身分を追求されたいのか?
 狼は、戦うつもりで集まってるわけじゃねぇ。
 例え、お前を拉致れば、天竜組が傾くほどの大人物だとしても、刺激さえしなければ『今は』見逃してくれるだろうよ。
 ……愛莉さえ無事なら、な」