俺様先生と秘密の授業【完全版】

「もしかしたら、狼の目当ては加月さん……かな?
 実は、狼の幹部に、知り合いが居るんじゃない?
 引退した早瀬倉の他に、もっと強力なヤツが。」

 あたし。

 岸君の質問に答えられなかった。

 すぐに判るコトとは言え。

 自分から話せないでいるあたしに。

 岸君は、言った。

「沈黙の狼は、早瀬倉達の代から先。
 総長と副総長を決めずに、トップ4(フォー)って呼ばれる地区ごとの最速、最強の四人の中から、毎月リーダーと副リーダーを決めて走ってるよね。
 ……もしかして。
 加月さん。
 そのトップ4-1(フォーーワン)を今、現役で張ってる吉住 猛(よしずみ たける)の知り合い?
 事実上、沈黙の狼の総長って言ってもいいヤツの……女、なんてことは……」

「……違うわよ」

「でも!
 天竜組のヤツらを見てるけど、このヒト達って自分のチームのロゴや、エンブレムの入ったモノってすごく大切にしてるよね?
 ましてやアレは。
 自分の地位を誇示(こじ)する証(あかし)の上着でしょう?
 全く関係ないヤツが、持って来れるワケが……!」

 ……ない。

 そう続けようとした岸君の言葉を。

 隣で、聞いていた直斗が、止めた。