ひゅ ひゅ ひゅ
と。
ほとんど音も無く。
まるで、もう少しでやって来る『夜』の『闇』のように。
静かな黒いバイクの集団が、海岸の空き地を埋めてゆく。
「狼……沈黙の狼達か。
早瀬倉……の迎えなの……?
でも、『鳥』は、とっくに引退しているはずで……」
と。
岸君は、不吉な黒い集団を見て。
まるで、水をかぶって頭が冷えたみたいに。
いきなり熱から覚めたのか、チラッとあたしを見た。
「昨日の昼ぐらいに、このヒト達、学校に来たでしょう?」
「……うん」
「それってさ。
保健室の早瀬倉目当てか。
クラスのヤツにも言ったけど、本当に私に用があるのかと思ってたの……
私。
天竜組に関わるヒトだから、バレて潰しに来たのかもって」
「……そう」
「……だけど、違うよね?
早瀬倉は、一発だけ、とは言え、殴られてたし。
教室まで私を探しに来るヤツは、居なかった。
……ねぇ。
このタイミングに、こんなに狼が集まるのは……
引退した早瀬倉や、ここに来られるか判らなかった私のタメじゃない……よね?」
「……」



