『お前早くね?まだ9時半じゃん!』
約束の日曜日―――。
10時の約束だったのにも関わらず、9時にはS駅に着いていたあたしに、圭は笑顔で駆け寄ってきた。
『えっ?圭、まだ9時半だよ?どしたの?』
時刻は9時半。
いつもギリギリが当たり前な圭なのに…
30分も早く待ち合わせ場所に着いてるなんて。
『まぁいいじゃん、とりあえず行こうぜ』
圭はそう言うと……
いきなりあたしの右手をそっと取り、ゆっくりと歩きだしていく。
正直驚いた。手を繋がれるなんて思ってなかったから。
だけど、繋いだ手の平…
握った指先から伝わってくる暖かい温もり。
ただ手を繋いでいるだけで。
こんなにも幸せを感じられる。
ねぇ圭?
このまま…
あたしをどこかに連れ去ってくれないかな。



