「…桃。」



ハッとなる。

…舞に耳打ちされるまで、すっかり華奈ちゃんの存在を忘れてた。



ゴメンね…、

心の中で謝って。



『あ、華奈ちゃんは?何飲む?』



笑顔で話しかけた。



――――…
――…



あたしが覚えているのはこれぐらい。



佐蔵の視線には気付かないふりを続けた。



なんでこんなにあいつが気になるんだろう―…、



…―きっと、“女になれ”とか言われたせいだよね。



この時は、自分の気持ちに嘘をついた。

…気づいてしまったら、いけない気がして。