『うるさい、黙れ。今日は聞きたいことがあって来た…。』
【その荷は?】


いつも余裕たっぷりな弥勒の声に、若干の焦りが含まれている事に気付くと阿修羅は原因を探してその腕に抱かれている荷に目を向けた。

よく見れば、上掛けに包まれているものが微かに動いているではないか!


阿修羅は飲んでいた酒を放り出すと、疾風の速さで今阿修羅達がいるこの部屋に封じをかけた。


もちろん、誰かに覗かれるのを防ぐためである。




【貴方は…っ、なんで人間の赤ん坊なんか連れて来たんです!】
『こいつが語った、まだ果てるのはイヤだと。私に、連れて行けと…。』


阿修羅がこれほど焦っているにも関わらず、当の本人はこれからどうなるかなど考えてもいないようで、アッサリと赤ん坊を拾った経緯を話した。
本来なら、この世の終わりを見届ける立場の弥勒は人間に触れる事すら許されない存在なのだ。

もし、この事が仏界に知れれば神としての地位さえ危うくなってしまう…。