そんな阿修羅の性格をよく分かっている弥勒は、黙って最後までその言葉を聞いてまっすぐ見つめ返した。



『……お待ちしています、阿修羅旺。』
【っ……!】



ゾクッと背中に走ったものは、あの時と同じ威圧感で…。

その場にいることに、耐えられなくなった阿修羅は背を向けて屋敷を飛び出した。






《良かったの?あんなこと言って…。》
『構いません。彼は、私を殺せない。もし…仮に、私を殺しに来たとしたら、よく成長したと笑って逝けますよ。』
〈それで、良いんですの?〉



阿弥の問いに対して、力無く微笑む弥勒。
決して、これで良いと思っている訳ではない。

だが、年若い阿修羅を茨の道へと引きずり込むような事は、どうしてもしたくなかったのだ。

自分が選んで、長い間側に置いていた相手だから…。


敢えて、突き放す事を選んだ。




『貴方達も、早くここから離れた方がよろしいかと。追っ手が来ないうちに…。』