【少しも待てないのですね、赤ん坊というのは…。】
『阿修羅、悪いな。待たせた。』
【あ、いえ。】


弥勒はゆったりした動きやすい着物を着て出て来ると、阿修羅に抱かれて泣いている赤ん坊をそっと抱き上げた。



『泣くな、男だろう?』
「あ…ぅ。」



弥勒が抱き上げた時、それまでポロポロと零れていた涙はピタリと止まり、きょとんとしている赤ん坊。
そして、ポンポンと背中を撫でてもらうと泣いていたことなど、綺麗さっぱり忘れて無邪気に笑っている。



『厄介だな、泣かれるというのは。』
【赤ん坊というのは、母が側にいないと心細くなるものなのですよ。】
『……母か、俺に乳はないんだが。』
【弥勒様、そういうことではなく。】


天然発言を連発する弥勒に、いささか呆れながら親代わりと言う意味なのだと説明すると分かってくれたようだった。

阿修羅にしてみれば、子どもが2人に増えたようなものである。