手がぬるっとした。

「あれ、血が……血、血がああああ!」

アンテナが無い代わりに手には血が付着していた。


「……るせー」

塊が喋った。


「だ……誰?」


「鴨川 ハル。16歳、12月3日生まれ射手座のA型。身長180センチ、好きな食べ物はキムチチャーハン、嫌いな食べ物は鯖、家族構成は父・母・兄が一人、趣味は特になし。特技はバスケ、利き手は右……」

なんと、塊だと思っていたのは鴨川 ハルだった、それだけでも緊張するのに、真顔で自己紹介してきた。


「わかった、わかったから!」

そう言うと、鴨川 ハルはぴたりと黙り込む。


「なんだ……?俺、今何か喋って……?」

鴨川 ハルはどうやら自覚していないようだ。


「はっ、鴨川君!額から血が出てるよ!」

さっき、俺が躓いたからだろうか。


「さっき、他校の馬鹿に絡まれたんだよ……寝てたら止まる。」

俺の声も届かないようで、鴨川 ハルはその場に寝転がる。


「余計に駄目だ、病院に行かなきゃ!」

すると、鴨川 ハルは突然枕にしていた鞄を漁りはじめた。


「ど……どうしたの?」


「保険証……探してるんだよ。」

それだけ告げると鞄を漁りながら鴨川 ハルはどこかに消えて行った。
彼は、気分屋さんなのかな……?