(なんなのよ!)

(なんなのよ!)

不満が脳天を突き刺す。

私がハルに話し掛けても映画に集中して無視するくせに阿東がポップコーンを差し出すと律儀に私を飛び越えて食べる。

阿東が泣いてティッシュと呟いて探している時には、音速で取り出して拭う、鼻もチーンする。

阿東が体が凝ったといえば肩を揉んだ。

一言で表せば異常。


付き合っている時のハルはもっと男らしくてついて来いタイプだったのに、阿東の周りに張り付いておべっか使って気持ち悪い。


「大丈夫?絆創膏僕持ってるよ。」

こっそりと、阿東が私の耳元で囁いた。
ヒールなんて慣れないもの履いたから踵がズレてたのだ。

そういう自分が惨めで、気付かれないように歩いていたのに……涙が溢れ出る。


「ミユ?」


「きらい、よ〜!わあ〜!」

人目も気にせず泣いた。

「ハル君、消毒液買ってきて!」

私は阿東に、隅のベンチまで誘導された。


「ごめんね……」

謝られても腹が立つだけだった。