「ごめんなさい、ごめんなさいっ……」

チンクシャは俺に脅えきって腰を抜かしている。
またか……元々、体格に恵まれていたのと感情表現が下手ないせいで、よく誤解されて、絡まれていた。

喧嘩も自分からだなんて絶対にしたくない。
喧嘩なんかより実家の農業の手伝いで畑を耕す方が楽しい。


「お前……、名前は。」


「阿東 千波です。」

チンクシャは話を振られて少し安心したようだ。


「俺は、鴨川君のこと知ってたよ。
憧れてたんだ。ほら、こんなチビだし。上手く喋れないから……ごめん、俺が弱いから君に迷惑かけたんだ。
おじさんに取ってもらえるように相談してみるから。」

俺の悪い噂ばかり一人歩きしているから知らない奴の方が少ないだろうな。


「頼んだよ。」


「鴨川君って、優しいよね。病院にも行ってくれたし。」

優しい……!?この、「鬼目」の異名を持つ俺が優しいだって!
それに命令したのはあんただろうが、忘れてるのかコイツ!


「何を根拠に……」


「え……だって、俺みたいなのと話してくれるし。」


「話しかけられたら、普通返すだろ。」

当たり前のことを言わされた。


「鴨川君……かっこいい……。」

阿東は涙ぐみ始める。
そんな、泣くほどのことなのか?


「えーと……阿東?は、いちいち大袈裟なんだよ。俺の前で泣くな。うざったいんだよ!」

泣く子供のあやし方を知らないので、怒鳴り散らしてしまった。
余計に泣くパターンだ……