肩に乗せられた手の影が蠢く。

「――うわぁぁぁあっ!!」

フリップは必死に振り払い飛ぶようにして距離を置いた。

「元来。様子見というのは拮抗した力を持つ者同士のするものであって、隔絶された力の前にそれは成しえない。」

ジリジリと近づくゲセニアから後退していくフリップ。

「見えるか?……」

ゲセニアが闇に消え、またフリップの背中を何かが触れる。

「うぉぉぉぉおっヴァジリスク!!『ギフト・ポイゾネスウィップ』」

ヴァジリスクの蛇皮で出来た鞭。

全体に猛毒が仕込まれており、触れただけでも生体を腐敗させるだけの恐ろしい力を持っていた。

それを闇雲に振り回すのだがゲセニアは闇に紛れ込み当たらない。

「もう気は済んだかね?」

背後から声がしてフリップは全霊を込めて、鞭をふるった。

その腕に違和感がはしる。

「……え?」

鞭をふるっていたはずの右手が手首の先から無くなっていた。

ゾリゾリ。

すると次第に右手が闇に飲まれていく。

血の一滴すらも出ない傷口を見ると、無数のハエがフリップの右手を食らっていた。

「ぎゃぁぁぁぁぁあっ!!やめろ。やめてくれぇぇぇえっ!!」

ゾリゾリ。少しずつ、だが確かに自らの身体が消えていく。

恐怖からかフリップは笑っていた。