サマー・グラウンドの最果て。

『炎神獣の寝床』と呼ばれる荒廃した山脈で精霊使い同士の戦いが始まろうとしていた。

「……よくここまで来れたね。」

フリップが誰もいない暗闇に向かって言う。

返事はない。

「僕のヴァジリスクが招来した数百種の毒蛇達を全滅させてくれちゃって……」

暗闇から何かが落ちる。

ヒモの様なそれが地面で僅かに跳ねて、落ちる。

「まじ――むかつく。」

ゴォッ。と溢れだすフリップの魔力に辺りが震えた。

「出てこいよ!!」

フリップが暗闇に向かい叫ぶと、ヴァジリスクは自らの牙を一本吐き飛ばした。

空中で空気に触れ瞬く間に毒素が紫色に変色していく。

「……あんたか……。」

牙は闇に触れると力果てた羽虫の様にポトッと落ちていった。

牙が触れた部分の闇が剥がれ、その男が姿を現すのだった。

「ゲセニア・アルボルト――!!」

「フリップ・クレイドル。君を処刑する。」