シルクは男を睨み付ける。

「取引だと?」

「おうよ。簡単な話さ。」

動けないシルクを囲う様にして男達がジリジリと近づいてくる。

「旅人なら無一文てことはねぇだろ?金目の物全部よこして、金輪際ここには近寄らないと誓え。」

「誓ったらどうだっていうんだ?」

ジリジリと詰め寄る男達。

「こいつは生きて返してやるさ。な?簡単な話だろう。」

生きて返す。そんなはずが無いのは分かり切っていた。

その時、憎悪に満ちたシルクの胸の中で何かが囁く。

『あの子を救けるには奴らを殺すしかない。殺りなさい。さぁ……』

「……うるさい。オレは誰も殺さない。」

『それではあの子を見捨てるのですね。今あなたが奴らを殺せば助かるのに、見捨てるのですね。』

「くっ、黙れよ。」

頭が割れる様に痛み、囁きと共に吐き気がするほどおぞましい感情が身体を駆け巡る。

「……?なんだこいつ。ブツブツ独り言いいやがって、気持ち悪ぃな。」

ゴッ。と頬を殴られてもシルクは微動だにしない。

「いいや、殺して金目の物も頂くぞ。お前等もやれ。」

「ヘイ、兄貴。」

ドス。ドスッ。と身体中を蹴られ、シルクは丸くなった。

『あなたもここまでされている。もはや奴らに改心の余地などない。彼等の為にも殺してあげなさい。』

「黙れよ。」

『さぁ、あなたが彼等を、あの子を、そしてあなた自身を救うのです。』

「黙れぇぇぇえっ!!」