闇がおぞましい何かを形どる。
それは悪魔とも妖怪とも違った。
ただただ、おどろおどろしく、そして見ているだけで震える。
それは枯れ果てた森を突き抜ける。
そこで初めてシルクの元へ向かっていたマリア達が敵の力を視認する。
「……なによ、あれ」
マリアは生気の抜けた力ない表情でその場にへたりこんだ。
サスケは表情を変えずにただ、そのナニカを見上げていた。
「あんなの勝てるわけがない……」
マリアは俯き、その目からは大粒の涙が溢れている。
枯れた大地はその涙をすする様に飲み干していく。
「……さい」
グレイシアの言葉にマリアは思わず顔を上げた。
「顔をあげたならよく見なさい」
グレイシアは劇をとばすでもなく、ただ慈しむ様にマリアを見ていた。
そして細い指でナニカの下を差す。
そこには小さな光があった。
「あれは」
「そうよ。
シルクは今も戦っているわ。世界のために、私たちの為に」
マリアは唇をぎゅっと閉める。
それに呼応したのか大粒の涙は、最後の細い滴を流して止まった。
「行こう」
サスケが始めに歩き出した。
「ええ」
グレイシアがそれに次、すぐにその足音は3つになる。
絶望の入り口へと彼らは希望に満ちた表情で向かう。
そこにいる友の為に、世界のために、なにより己の信念の為に。
「シルク今行くわ……」



