強大な闇の荒波がシルクを飲み込む。

シルクの魔力を食べて膨れ上がるオハンがいつしかシルクの全身を覆うほどに大きくなっていた。

「……この闇はなんて悲しいんだろう」

ぽつりと呟いた。

ミカエルはシルクのその表情に眉をひそめる。

『私は……なんと愚かな』

闇が辺りの物質を粉々に砕き、その原子すらをも素粒子も残さぬほどに侵食し食らいつくしていく。

触れれば肉体であっても容易く消滅させるだろうその黒濁の闇を目の前にしてもシルクは表情を変えない。

「リコ……僕は君を助けるよ」

闇が駆け抜ける度にオハンに小さなヒビが生じていく。

最早オハン自体が闇の力とシルクの光を食らうのにも限界がきていた。

「ありがとう『オハン』」

オハンの装飾部に一直線の亀裂が入る。

シルクはオハンに手をあてがうと今までより更に強力な魔力を練り込んだ。

最後の晩餐に最上の魔力を食らったオハンは神聖な聖堂の様にシルクを包み込んでいく。

その光は無明のはずの闇を中から照らし、リコやルシファーもその異変に気づいた。

シルクはオハンを左腕から外し、そっと宙に置く。

そして、太陽の様に燦然と煌めく一振りの剣を手にした。

「太陽神の剣よ。この世界の闇を、その光が生み出す影すらもを、隔てなくこの世の全てを照らせーー

『アルティメット・レーゲン=暁の雨=』!!」

シルクの言葉に呼応した太陽神の剣が純白にきらめきだす。