シルクは闇から現れた人物に驚愕した。

「り……リコ?」

黒い紋様を全身に刻み、あの美しかった髪は老婆のように渇き白くなっている。

白目は赤く血走り、血管だけでなく神経系までもが浮き上がっている。

「リコ!僕だ、シルクだよ!

分かるなら返事をしてくれリコ!!」

『邪魔な感情、記憶はすでに完全に抹消している。

この女は最早貴様の存在など知らぬ、愛も世界も家族も放棄した完璧な私のためだけの器だ!

さぁリコ、この血を浴びるのだ』

残忍な笑み。

シルクは怒りが吹き上がるのを感じた。

「……はい、ルシファー様」

力なくそう言うとリコは機械のように一定の速さ、歩幅で吹き上がるソフィアの血を目指して進んでいく。

『――!何をしているですかシルク!!』

「……リコ、リコ。」

『シルク!早くあの娘を止めるのです、でなければ彼女は完全に闇に心を支配されてしまう』

最も大切な存在の変わり果てた姿にシルクの足はすくんでしまっていた。

ミカエルは宴の誓約を破る英断を下す。

『止まりなさい!光撃!!』

凄まじい光の波がリコに向かっていく。

『――黒撃!』

それはルシファーの闇に阻まれてしまう。

『さぁリコ。

貴様の血に流れる闇の力を解放しろ』

シャワーの様に降り注ぐソフィアの血を何の躊躇もなく浴びるリコ。

白い肌がみるみる鮮血に染まっていく。

ドクン。

「あ、がっ」

急にリコが声を殺すようにうめきだした。

ドクン。ドクン!


胸を押さえながら膝をつくリコ。

悶絶しながらもリコはソフィアの血をその見に受け続ける。

ドクン。ドクン。ドクン。ドクン!!!


『さぁ、覚醒の時だ闇に愛されしソフィア族の末裔よ』