ソフィアが異変に気付く。
今までどんなに攻撃をしようとも何の反応もなかった幻術空間が急に歪みだしたのだ。
『……これは』
ルシファーは逸速く理解した。
そして、憎しみに満ちた表情のなかどこか愉快そうに笑っていた。
「なんだこれ?まさか、あのカスが」
幻術空間は強烈な光を発して崩れ去った。
散った魔力の埃を払いのける。
「やぁ、久しぶりだねソフィア」
幻術空間から出てきたシルクはもう別人の様な顔をしていた。
ソフィアはそんな様子に理解が追い付いていないようだった。
「……お前、なんだよその魔力」
「……説明の必要があるかい?」
シルクはミカエルの表情を確認してからルシファーを見据える。
『どうやら二つの扉を開いた様だな。
何故お前がデモンズ・ゲートの鍵を持っていた?あれは堕天使か魔族以外は生成することはできない代物だ』
ルシファーの問いにミカエルは淡々と答える。
『堕天使と魔族以外にもう1つの種族がそれを生成し得ることを忘れましたか?』
ルシファーの表情が憤怒に歪む。
『……神族か!』
棘や蕀の様な魔力が吐き出される。
『この鍵は戦神オーディンより託されました。ルシフェル、あなたを今度こそ葬る為にね』
ミカエルはいつものミカエルではなかった。
『貴様ごときがこの私を葬る?アークエンジェルスも居ないこの状況で、貴様がこの俺様を!?』
天使と堕天使の桁違いの魔力がぶつかり合う。
『残念なことにアークエンジェルスはいませんが、喜ばしいことに私には信頼足り得る友が居ます』
ミカエルはそう言ってシルクを見た。
シルクは頷いてルシフェルを見つめた。
『人間を友などとヌカす貴様にこの俺様が負けるわけがなかろう!
こいつらを蹴散らすぞソフィア!!』
「……あいよ」
この時のソフィアの表情を見たものは誰も居なかった。
『彼を打ち倒しリコを、救いましょう』
「あぁ、それでシモンさんのところで皆でまたご飯を食べるんだ」