なぜクラフィティーはその様な回りくどいことをしたのか?

それは闘いにおける一瞬の迷いが生死を分かつことを彼は誰よりもよく知っていたからである。

元来ほとんど魔力を持たなかったクラフィティー、血の汗を流すような鍛練の果てに常人程の魔力を手に入れたがそれは彼の限界であった。

宴は魔力がものを言うことがほとんどの世界である。

幾ら体術を磨こうとも回避不可の魔法を使われては元も子もない、そこで彼は己の魔力の全てを幻術に当てることにした。

一瞬の迷いは行動を遅らせ、反射を鈍らせる。

それは利息のようにつきまとい、目に見える結果だけを無情に突きつけるのだ。

即ち死である。

「…………」

シルクはまんまとその策略にはまり、思考を鈍らされていた。

懸念は迷いを身体に伝え鈍らせる。

今までの超感覚は身を潜め、また一方的な闘いになっていくのだった。