クラフィティーよりも先にうごきだしたシルク。
依然として身体と感覚のキレは衰えていない。
二歩目と同時に光撃を放ったシルクは、その光の筋に隠れるように身を縮めながら前進していく。
クラフィティーは迫り来る光を回避するがまだ霞虹に変化は見られない。
クラフィティーの着地と同時にタラリアで迫り左の拳を、重心となっている右側面に向けて放つ。
クラフィティーはそれを左手で受けとめ、霞虹でそのままシルクに切りかかる。
霞に隠れた刀身は見えない。
シルクは後方へと飛ぶ。
霞はゆれながらシルクへと向かっていき、その切っ先がわずかにシルクの腹に触れた。
クラフィティーからだいぶ距離を取ったシルク。
先ほど霞虹に触れてしまった箇所を見るが変化もなければ、擦りきれた跡もない。
「……?
不発?それとも」
シルクはゆっくりとクラフィティーを見た。
その時、クラフィティーは不敵な笑いと共に一言呟いたのだった。
「触れたな?」
ぞわっと全身に悪寒がはしり、冷や汗が伝う。
「いったい何が起きてるんだ?」
そうシルクがまた自分の服へ視線をわずかに落とした。
刹那。
クラフィティーはその隙を逃さずシルクに斬りかかった。
霞虹の切っ先がまた掠める。
「今度は三センチほど、でも切れていない」
クラフィティーの攻撃はどんどん加速していき、もはや霞虹に触れずに回避することなど不可能になっていた。
「三センチは猶予があるのなら、無理に距離を置いて、反撃のチャンスを潰す意味もない……なっ!?」
5度目の攻撃で初めてシルクの服が切り裂かれ血が舞った。
それは霞虹の先端から二センチほどの部分が掠めただけであった。
その追撃が更に深い5センチほどの部分が確かにシルクの肩口を通過したが、また傷はなかった。



