「タラリア!」

シルクの呼び掛けに応える様に煌めいた天界の靴。

シルクの背後へと回り込んだクラフィティーを捕らえた。

「ぬっ、ぐぉぉっ!」

後ろ回し蹴りはクラフィティーの側腹を打ち砕こうとしたのだが、不測の事態ですら防御を怠ることはなかった。

一瞬の間とも言えぬほどの間に、両腕をクロスさせながら滑り込ませ、シルクの打撃を受け止めた。

ミシッと骨が軋む音が辺りに響いた。

「よもやこのワシを捕らえるとはな。

まだ余力も残していそうだ。これ以上いたずらに長引かせては万が一のこともありうる……

ここは、全力で潰させてもらう」

ここへ来て初めてクラフィティーは魔力を練り始める。

今までの圧倒的な威圧感ともまた違う。

今までの敵と比べれば少ない魔力。しかし、刺さるほどに洗練され研磨されているのが分かる。

「ギフト……『霞虹=かすみにじ=』」

白い靄のようなものがクラフィティーの剣を取り囲んでいく。

それはわずかばかり光を反射させ儚い虹色を放っていた。

霞は完全にクラフィティーの剣を覆いつくしていった。

刀身は見えない。

柄を握る手も、腕の半分ほどまでが霞に飲まれ視認することができない。

「あれがクラフィティー伯爵のギフト……

強い魔力を感じるわけでもないのに、なんなんだこの言い様の無い悪寒にも似た恐怖は?」