その頃、各々の死闘を終えたグレイシア、マリアそしてサスケがシルクの元へと向かっていた。

疲弊しきっているマリアを背中越しに気にかけながらマリアはゆっくりと走っていた。

「……覚悟なさい」

「えっ?」

グレイシアは少しだけ悲しそうな表情でそうマリアに告げた。

「恐らく今シルクが闘っている相手は十中八九、私達が思い描いた人物で間違いないわ。

そして……


その場合、彼はこれまでにない絶望的な敗北をすることになる」

幾多の闘いを経て、確実に実力を伸ばしてきたシルク。

大陸王との闘いでの潜在能力を解放させた姿を目の当たりにして、マリアの中でそれは確信に変わっていた。

「100年前に私も彼と刃を交えたことがあるの」

「グレイシア様が……あの方と?」

「そう。大陸王同士の模擬戦の様なものでお互いの軍隊を鼓舞するのが主な目的だったわ。

そこで私は彼に負けた。圧倒的にね」

グレイシアはその時のことを思い出しているのか小さく空を仰いだ。

マリアは口を開く。

「歴代最強の魔力を誇るグレイシア様が敗北したというのは私には信じがたいのですが……」

そう言ったマリアをグレイシアは変わらぬ表情で見つめる。

「無論模擬戦だから死闘となれば話は別でしょう。

でも私は確かに負けた。見ていた者の中でそれを理解できたものがどれだけいたかは分からないけど確実にね」