グレイシアは一つ大きなため息をついて、そして声をあげて笑う。

「はははははは。

本当に呆れるわ。ゲセニア・アルボルトあなたは確かに本当の王の器を思い知ることは出来ない様ね。

ねぇ、何だか少し息苦しくなてきたんじゃないかしら?」

グレイシアがそう言うと、恐らく彼女の声と共に吐き出された息が何かを揺らしたのだろう、僅かに紫色の光が揺れた。

「・・・何を言って」

そしてゲセニアは気づくのだった。

「かっ・・・な、なんだこれは・・・!!

息が出来な」

苦しみ悶えるゲセニア。

喉元に手をやろうとすると両手も動かないことにことに気づく、そして量の手に目をやると指先がアメジストの様に結晶化してしまっていた。

それは指先からじわじわと全身に広がっていく。

「私の招来する死の氷は全ての物を原子レベルで結晶化させる。それは接触する原子を飲み込む様に直ぐさま広がり私以外の全ての物を犯し尽くすまで止まらない」

瞬く間に全身の自由が奪われたゲセニア。

「ああああああああああああああああああっ」

恐怖から発狂するがその醜い声すらすぐに止む。

「闇に覆われたままだったら確かに生きながらえたでしょうね。戦いの続いた私より今のあなたの方が魔力がもったかもしれない。でもあなたは油断し絶対防御を解除して私の前に現れた。全く軽率極まるわ。

もう一度言う、あなたはやはり――――」

紫色の結晶と化したゲセニア。

グレイシアはそっと彼の体に触れる。

「王の器を知ることもなく死の大地へ崩れ散る」

パリン。と渇いた小さな音を立ててゲセニアは脆くも崩れ去った。

粉々になった紫色の結晶が大地に落ちて煌めいていた。

「シヴァ・・・もう良いわ」

魔力を封鎖したグレイシア。

辺りは結晶以外何もない更地へと姿を変えていた。

「やった・・・んですよね?グレイシア様」

更地の向こうから歩み寄るマリア。

グレイシアは振り返ることなく言った。

「彼は本来ならこうして私なんかとあいまみえることはなく死ぬこともなかった。

こんな戦いに意味などあるはずがない。たった一人の王の娯楽で掛け替えのない命が無駄にされて良い訳がない。

私はあいつを許さない・・・波乱を呼ぶ者の末裔よ!!」