フレアの怒号にメゼシエルは笑う。

「何がおかしい?」

辺りで眠っていた動物が反射的に覚醒し逃げるほどの殺意を込めた瞳。

しかしメゼシエルの笑顔に変化はない。

『百年前にも言いましたよね?

私は"通達する者"その役割は神からの御告げを宴の参加者に伝えること』

「そうかい。

では何故俺にそこまでの殺意を放っている?」

押し隠す殺意すらフレアには見えていた。

能面の様だった笑顔が崩れる。

『ですから通達ですよ。通達。

今日はあなたにある通達をしに来たのです』

「ある通達だ?」

『ええーー

メゼシエルが消える。

神がかり的なスピードをフレアは視界の端で捕らえていた。

フレアの命じるままに火炎車輪がメゼシエルを捕らえる。

「へっ、こんなもんかい天使さん」

手応えのあった場所で大爆発が起きる。

フレアは確かに手応えを感じていた。

「ーーーーーーがっ!?」

フレアの腹部から闇よりも黒く鈍い鎌の刃が飛び出す。

それは鮮血を撒き散らしながら引き抜かれる。

『だから言いましたよね、私は"通達する者"。宴では神からの伝令役となっていますが、真に私が通達するのは"死の通達"

ーー聞きましたね大陸王。そう、私の力なんて、こんなもんです』

膝が折れフレアは地に伏せる。

止めどなく流れ出る血。

『言い忘れていましたが私の鎌には血流を促進させるホルモンが備わっています。勿論天界のものですので下界での如何なる手段を以てしても、流れ出るその血は止められない』

振り返るフレアの目に写ったのは天使ではなかった。

「貴様……堕天使か」

漆黒のローブに紅く汚れた翼。

獣のように残酷な瞳でメゼシエルはフレアを見下していた。