その伝説は知らぬ者などいないだろう。

戦の神が手にした槍は、一度投擲されれば必ず標的を居抜きそして
死に至らしめる。

戦神と謳われたオーディンが愛した必中必殺の槍。

「まさか、こんな形でお目にかかる日が来ようとはね・・・」

その槍から感じる魔力の戦慄にワイズは身が震えていた。

「これが・・・」

サスケは自らの眼前に将来した槍を眺め感嘆の声をもらしていた。

その神々しさはもはや恐怖を超える。

「これが戦神オーディンの愛した勝利の槍『グングニール』」

元来の槍とは違う巨大な槍。

突くにはあまりにも鈍重だが、投擲された時の破壊力は言うまでもなく、更にその追尾からは何者も逃れることはできない。

まさに勝利の槍。

それをサスケが手にしていた。

「・・・ふははは」

サスケは声をあげて笑う。

自らの手中にあるその獲物の力に。

「なんと良い気分か。

拙者は力の高みとは己の歩みで以て上り詰めてこその愉悦と思っていたが、どうやらそうではなかったらしい。

グングニール。全くなんと素晴らしい武具であろうか・・・
手にするだけで世界の悉くを手中に収めたような気にさせてくれる」

今までのサスケとはまるで別人のように、顔を歪めてしまうほどに笑っていた。

その姿は恐怖の一言に尽きる。

『ワイズ・・・あいつヤバイわ。

逃げましょう』

「・・・シルフィード」

それは聖霊であるはずのシルフィードが、自らのパートナーを護る為に導き出した最後の答えだった。

ワイズには勿論シルフィードの思いは分かっていた。

無意識にその足は後方へと退く。

しかし、その時。

シルクは勇敢か無謀か歩を進めるのだった。