土煙が部屋を満たしていく中でワイズが身体を起こした。
その時ワイズはヒュッと何かが空を切る音を聞いた。
その瞬間、部屋の土煙がスッと晴れる。
ワイズはその正体に戦慄を覚える。
「ようやくその重い腰を上げるか……オーディン」
今まで闘いに無関心でただ傍観していたオーディンがサスケの前に立っていた。
その眼光は鋭く、視線が交わるだけで寒気のするほど冷徹であった。
『小僧をここまで追い詰めるとは見事だ。戦の神として誉めてやろう』
ワイズに遅れて身体を起こしたシルクだったがオーディンの声だけで威圧感に押し潰されそうになる。
『光の小僧。貴様の魔力を打ち祓う力まっこと面白い。
小僧の魔力の盾だけでなく矛に回していた魔力も祓うことができると見る。肩を裂かれた時にその矮小な魔力しか持たぬ羽衣で刀を受けていたのがその証拠。
風の小僧は翡翠の風を部屋に満たし小僧の霞と同じことをやってのけた。
そして小僧が熱くなり光の小僧を先に狙うことを分かった上で、光の小僧のに致命傷がないよう補助しながら隙をついた』
オーディンは愉快そうに笑う。
そしてサスケを見下ろす。
『サスケよ。
今の貴様ではこの小僧共に勝てぬ。だがどうだ?この儂に力を乞うならば、小僧共と対等に戦える力をやらんでもないぞ?』
「……なんだと?」
サスケは傷付いた身体を起こす。
その表情は怒りで満ちていた。
「拙者を愚弄するか精霊!!
拙者の闘いに貴様の力など必要はない」
『黙れ童。貴様により命の危機を肌で感じれる闘いをくれてやろうというのだ、儂の問いには貴様の感情など不用。
ただ儂の愉悦のために貴様は頭を垂れていればよいのだ』
オーディンから放たれる魔力にサスケは膝をついた。
押し潰される威圧感に頭をあげることすらできない。
ポタポタと冷や汗が流れ地面に落ちる。
『今一度問う。
儂の力で小僧共を討つのか……否か』
サスケは怒りに身を震わせ、力任せに拳を地面に叩きつけた。
「良いだろう。そこまで言うのなら貴様の力とやらを使ってくれるわ!
拙者に見せてみろ、拙者が辿り着かなかった闘いの愉悦とやらを!!!」
『ふっ愚問だな……受けとれ我が愛槍』



