肘ほどまでしかない低い崖。
その下で気持ち良さそうに泳ぐ女性のブロンドの髪が波で揺れていた。
「えっ、あの……」
綺麗な笑い方。
それだけで彼女が貴族であることは容易に想像できた。
「命を粗末に……とか聞こえたけど?」
「いや、あれはその身投げだと思ったので、っていうか服を着てくださーい!!」
顔を真っ赤にしながら、シルクは自分の手で目を隠しながら叫んだ。
水浴びをしている女性は一糸纏わぬ姿で、豊満なバストが露になっていた。
「ふふ……可愛い反応ね。使用人にいつも身体を拭いてもらっているから、気にしないのに。」
女性はゆっくりと低い崖を登る。
「あ、あなたが気にしなくても……僕が気にするんです!!」
女性はまたクスリと笑って、一枚だけ服を羽織った。
「私はマリア・ビーナス。黄炎で金融関係の仕事をしているわ。あなたは?」
マリアはまだ少し湿っている、細く美しい手を差し出した。
「あ、僕は灰炎から来た……シルクと言います。」
シルクは握手を拒む。
それは下民が貴族と握手を交わすなど失礼以外のなにものでもないことを知っていたからだ。
「私から握手を求めたのだから、それを拒むなんて失礼よシルク。ほら。」
マリアは嫌な顔一つせずに強引にシルクの手を取り、握手をした。



