「彼の能力は

霞のかかる範囲内。つまりは彼の結界領域内で、彼の刀の刀身だけを瞬間移動させるもの。」

ワイズが正面からの攻撃と誤り背後からの一撃を受けた時。

サスケは実際にはワイズの読み通りに正面にいたのだ。

そして自らの存在をあえてワイズに悟らせながら、防御できるように刀を降り下ろす。

その瞬間、刀の刀身のみをワイズの背中へ瞬間移動させる。

目の前でサスケは確かに刀を振るっているが、ワイズに防御の手応えはなく。

背後から降り下ろされる刃はみすみすとワイズの無防備な背中を切ってみせた。

「霞は普段から目の見えない君に有利な目隠しであると共に、君の攻撃自体を瞬間移動させる空間移動魔術だったということだ。

そうだろう?」

「ふっ……名答だ。

だが何故分かった?」

サスケは一旦刀を鞘に納めた。

ワイズは未だ血の止まらない右肩を見た。

「最後の攻撃。君は僕との闘いにけりをつけるために、今までの攻撃とは違うことをした。」

『今までの攻撃とは違うこと?』

「ああ。

それまでの攻撃は全て、サスケ自身も僕に近づき自らの気配を囮に、刀を僕の死角に放っていた。

だが最後の攻撃は明らかに僕の迎撃範囲外。それどころか、君の居合いの間合いより外に君はいて、刀だけを瞬間移動させた。

これにより、僕は君の気配を誤認していたんじゃないことが確信され、君の能力が遠隔的なものであることを示唆した」

黙して聞いていたオーディンの口がゆるむ。

「君の刀、何か不自然なことはないかな?」

「なにっ!?」

サスケは自らの刀に触れる。

『ふむ、やりおる』

そしてサスケより早くにオーディンはワイズの策略に気づいた。

刀身にゆっくりと触れ、サスケは切っ先に何の手応えもないことが分かった。

「ーーこれは、錆どころか貴様の血すらも付着していない?

いったい」

サスケの知略に満悦そうなオーディンが口を開く。

『小僧の刀に付着した自らの血を風で乾かし、錆となる前に刀から結晶化した血を剥ぎ取り回収したのだ。

主ほどの風の操作能力があれば刀に風を巻き付け、それがサスケの元へ戻った後に自らの手に戻るよう遠隔操作することも可能だろう。

遠隔操作され結晶化した血が手元に戻ると言うことは、小僧の力が斬激を飛ばしたりする能力ではなく、刀による直接攻撃であることが確かとなり、
貴様の察知範囲外からの直接攻撃となれば、それは刀身自体が遠くから運ばれること以外にはありえない。

ということだな?』

「その通り。さすがだね」

『だが貴様は小僧の能力のからくりと共にもう一つの事実にも気付いたのだろう?』

ワイズの表情がここへきて初めて曇りを見せていた。

オーディンは残酷な事実を突きつける。

『霞がなくても速力で劣る貴様が、この霞に包まれた空間で死角から放たれる攻撃を防ぐことは不可能

驚異的な反射で生き永らえども、貴様に小僧に勝つ術はない』