「……シルフィード。今の違和感を君も感じたかい?」
正面と思えば背後から切られ、背後と思えば正面から切られてしまう。
闘いに慣れたワイズほどの力のある者ならば、その感覚を誤ることはまずない。
「これは、どうやら……
彼の、サスケの術中にはまってしまったようだね」
右から音がしてワイズは反射的に迎撃を試みる。
「ぐっっ」
しかし、斬撃は左側から現れ無防備なワイズの背中を切る。
確かに気配を察知し、防御を試みるワイズであったが、その身体には無数の切り傷が刻まれていく。
未だ防御はできぬままに。
「段々と速力も落ちてきたようだな。初めて自身の神経回路に魔力を注ぎ込んでの闘いをしたのだ、魔力消耗が激しくても仕方がないこと
そろそろ、我が愛刀の錆となれ『月泪』」
ゆったりとした動きで切っ先が弧を描いていく。
この時点でワイズはサスケの気配を感知できていなかった。
それはワイズが危険を察知するに足りるだけの距離にサスケが居ないことを指していた。
勿論その距離にはサスケの日本刀の間合いと、幾度となく刃を身体に刻み距離を図った居合いの間合いも含まれている。
サスケの刃が円を描き頂点に達する。
そして、目にも止まらぬ速さで振り抜かれる。
「ーーなんだと!?」
突然にワイズの目の前に刃だけが現れ、ワイズの右肩を深々と切り裂いた。
刃はまた霞の中に消えていく。
ドバッと鮮血が地面に落ちる。
『ワイズ!!』
「はぁはぁ、だい、じょうぶ」
ワイズは苦痛に顔を歪めながらシルフィードに言う。
右肩の出血は止まりそうもない。
「全くひどい傷を負ったものだ。
…………だが、今の一撃で彼の能力が分かった」
ワイズの言葉にサスケの目元がピクリと動いた。
『サスケの能力が分かった?』
「あぁ。からくりは簡単だ。
だが、からくりが分かった所で避けることができない。素晴らしい……いや性の悪い能力だ」



