厳冬の城のとある部屋。

そこは元々の城にはなかった様式のもので、サスケが大陸王になってすぐに用意させたものであった。

独特の匂いをはっする新しい畳がびっしりと敷き詰められている。

その最奥でサスケは禅を組み神経を研ぎ澄ましていた。

その傍らにいるのはサスケの精霊。

西欧の鎧に身を包む老人。

だがその威圧感たるや、存在感たるや一見して只者ではないと判断するに余りある程の者である。

『・・・ほう。

これは歯ごたえのありそうな猛者の気配が二つ。』

鋭い目つきは射抜くよう。

低く響く声は恐怖すら感じる。

『それもものすごい速さでこちらに向かってきている。

・・・流石に基度はワシの助けが欲しいのではないか小僧?』

挑発するかのような口調にもサスケの神経は微塵も揺れ動かない。

そして静かに言い放つ。

「これほどまでの手練達と剣を交えることができるというのにお主の助けを拙者が欲すると?

笑止千万なり」

サスケはゆっくりと立ち上がり、壁に掛けていた長モノの日本刀を手に取る。

『ふん。せいぜい助けが欲しくなったら、わしに泣きつくがいいわい』

そい言って精霊は完全に気配を消した。

現早春の大陸王、現立夏の大陸王を相手にしても精霊の力を使う必要はない。とみなぎる士気と自信がそう語っている。

すると激しい風で外開きの扉が内側へ跳ね開けられる。

「ようこそ我が城へ。待っていたぞ早春の大陸王」

扉の先から感じる激しい嵐のような魔力にサスケは笑っていた。

「勝手に根城へ踏み込んだ割に歓迎されている様で嬉しいよ厳冬の大陸王。と、言いたいところだけど不気味に思えるね」

ワイズはゆっくりと畳の上に乗る。

畳のこすれる音が無音の空間に不自然なほど大きく響いたように感じた。

「特に立ち話がしたいわけでもないんでね、さっさとその刀を抜いてはくれないかい?

臨戦態勢でもない相手を切って喜べるほど人格が崩壊できていないのでね」

そよ風のフルートを具象したワイズ。

サスケは直立し、ぶらんと刀を鞘に入れたまま左手に持っている。

「・・・気にかける必要はない。今のこの状態が拙者の型。

いわば、貴様の言う‘臨戦態勢‘と言うやつだ」

不自然なほどに自然な構え。

そこから発せられるオーラにワイズの集中は極限まで研ぎ澄まされていた。

「そうかい・・・じゃあ遠慮なく

行くよ!!」

ワイズはフルートを奏で風を発生させる。

その風は音を立てて空気を切り裂き、鎌鼬となってサスケに向かっていく。

「彼に動きはない、どうした厳冬の大陸王?

このままでは直撃して即刻終了になってしまうよ?」

ワイズの感覚が確信に変わる距離。

どれほどの使い手であっても、どれほどの精霊の力を以てしても回避が不可能と判断する間合いに鎌鼬が突入した瞬間だった。

ワイズは確かに部屋の最奥に佇んでいたはずのサスケの姿を見失う。

「・・・居合抜き一の型『瞬刃』」

「・・・なっ!!?」

背後にサスケの気配を感じ、刀を鞘に納める音をワイズが効いた刹那、ワイズの胸が裂かれ血が吹き出した。

それほどまで深い傷ではなかったが、全く意識していなかった傷にワイズの膝が折れる。

「ふむ。早春の大陸王も名折れやもしれんな」