「その力で自分自身の感覚を破壊して、戦闘能力を上げたっていうことか。

なんでだ!?何故そうまでしてこの戦いに拘る?

君は大陸王に敗れ、今は命を懸けてまで戦う理由などないはずだ」

シルクの叫びにグレイシアは睨む。

「命を懸けてまで戦う理由がない!?

まだ分からないの?ここは弱肉強食の世界。いつ何時の戦いであれ負けたら死ぬ。

サスケに負けた時点で私の個は死んだ。今は彼を護るための彼の手足でしかない。
サスケ様が戦いに勝利を望む限り、手足である私が負けて良い理由など一つもないの!!

分かったら構えなさいシルク・スカーレット!!」

グレイシアの怒号。

しかし彼女はシルクに攻撃をしない。

「なによ?

なんなのよアンタは!?」

シルクの瞳からは戦いの意志が消えていた。

憐れみの様な瞳でグレイシアを見る。

「じゃあなんで君はそんなに悲しい目をしているんだい?

本当は君だって戦いを望んではいないんじゃないの?大陸王のしがらみから解放されて、どこかで安心したんじゃないの?」

グレイシアは首を振る。

「戦いを望まない人と戦う理由は僕にはない。

引いてくれグレイシア・ウィザード」

シルクの言葉にグレイシアは飛び出した。

「ふざけるなシルク・スカーレット・

私はアンタみたいな甘い餓鬼が一番嫌いなのよ!!」

手当たり次第に降り下ろされる拳と、氷柱の舞。

雪原に乱れざく氷の柱が視界をどんどん狭くしていく。

「もう止めるんだ。

『光縛』」

シルクの左腕に巻かれた大天使の羽衣が強く光る。

雪原を蹂躙した氷柱に反射しグレイシアは光の中に包まれる。

まばゆい光が治まる時にはグレイシアの身の自由は奪われていた。

「捕獲完了」