「シルフィード――『鈴風=スズカゼ=』」

そよ風のフルートにワイズが魔力を込めて息を吹き込む。

清らかな音色が辺りに響き渡る。


シルク達に襲い掛かっていた6人は一斉に、聞こえるはずのない鈴の音を聞いた。

それは耳元にまとわりつく。

夏の涼しい風が肌を撫でた感触を認識した時、6人の視界には夏の大草原と照りつける太陽の景色が広がっていた。

「――どういうことだ?」

「我々は確かに厳冬の大陸、雪の世界にいたはず」

「まさかこれは、幻術?」

ワイズは幻術は使えない。

いや、正確に言うならばシルフィードの能力では幻術は使えない。

「やはり太陽の光というのは清々しいね」

突如目の前に現れたワイズ。

6人は身構える。

「これは幻術ではないよ。

……ま、現実でもないけれどね」


そう言ってワイズは口元を緩めた。