「早春の大陸王……ワイズ王が!?」
その時、柔らかな風が吹き抜け、シルクの目の前にワイズが現れた。
ワイズは驚くシルクに微笑む。
「こんにちは立夏の大陸王」
たたずまいで分かる、王としての資質。
伸びた背が、真っすぐな瞳が、柔らかな物腰の奥に隠れる研ぎ澄まされた魔力が、自ずと頭を垂れさせられる。
「今日は君に話があって来たんだが……時にシルク・スカーレット」
「え、はい……!!」
一瞬にしてワイズは姿を消し、シルクの背後を取る。
その手に握られた『そよ風のフルート』には鋭利な風の刃がまとわれている。
首に突き付けられた刃がシルクの首の皮一枚を切り僅かに血が垂れた。
「これから統一王の座をかけ争おうとしている僕が君の城にやってきたのに、魔力を一切纏わないとは甘過ぎやしないかい?」
「……わ、ワイズ王?」
「現に君は背後をみすみすと奪われ、今まさに命を僕に握られてしまった。
神の啓示が休戦を謳ったからといって、素直に休む理由などないだろう?
さぁシルフィード……」
解き放たれた魔力がシルクの肌を震わす。
そしてワイズが風の刃を振り上げた。



