翌朝になりシルクは目覚める。

キッチンからは鹿を焼く良い匂いが漂っていた。

「おはようございます」

食卓にはサモンとリコがいて、他愛ない話をして、笑顔で、ただ幸せで。

そんな日常がもう無くなってしまったのだった。

「よぅシルク・スカーレット。

さっき散歩してた時に捕まえた鹿だ。旅立つ前に食え」

鹿を丸々焼いただけのフレアの豪快な料理。

「……ぷっ」

シルクは笑った。

声を出して笑っていたら、無意識に涙がこぼれ落ちた。

涙が床に落ちる。それを見たら涙が止まらなくなった。

「……うっ、くそ。何でこんなことになっちゃったんだよ、リコ……」

フレアは無言でぶつ切りにした鹿肉を渡す。

シルクは泣きながらそれを口一杯に頬張る。

「そうだ、食え。人間も動物だ食わなきゃ動けねぇし、困難に打ち勝つこともできやしねぇ」

鼻をすすりながら肉を頬張るシルク。

しばらく涙は止まりそうになかった。

食べて食べて、泣いて、シルクは再び戦いの中に戻っていく。

神の試練まであと二月と少し。

シルクは城に帰還する為、灰炎を後にした。