夕闇の路を少年が駈けている。 手には口きりいっぱいに川の水を入れられた桶を抱えている。 その桶が足取りで揺れる度にピチャピチャと水を溢れさせていた。 明かりのない獣道。 響くのは少年の走る足音と、わずかに切れた白い息だけ。 目的地である少年の村へ、あとほんの一息にまで来た時、それは現れたのだった。