ゲセニアの凶刃がシルクの胸を突き破ろうとした瞬間だった。

それは何かに弾かれる。

「――何だと!?」

ゲセニアの刃を弾いたもの、それは紛れもなく闇。

「ベルゼブブか?貴様いったい何を――がはっ!!」

ゲセニアの胸を突き破った闇の刃。

滴り落ちる血すらも飲み込む闇に、ようやくそれがベルゼブブの力ではないことに気付く。

「――がはっ。貴様、いったい。」

そこに現れたのはソフィアだった。

「…………。」

タバコを吹かしながら、冷酷な瞳でゲセニアを見下ろすソフィア。

「貴様さえいなければ私はこの餓鬼を倒していた。勝ったのは私だ。私が炎王に挑戦す……」

凄まじい怒気を放つソフィアにゲセニアは口をつぐんだ。

否、声を出すことすら出来ないほどの恐怖に襲われたのだ。

「今、凄く虫の居所が悪いんだ。悪いけどさっさと消えてくれ、ルシフェル。」

タバコから立ち上る真っ黒な煙。

それが恐怖で小刻みに揺れるゲセニアの身体を飲み込んでいく。

「……やめ、やめろ。私は、私はぁぁぁっ!」

闇に飲まれたゲセニアが一瞬にして消滅した。

断末魔すら残さず、散り一つなくゲセニアが殺されてしまう。