冷気は白い軌跡を残しながらグレイシアを取り囲んでいく。
「忠告しておくわ。痛い目にあいたくなかったら、私には近づかないことよ。」
冷気は昇華することなくグレイシアにまとわりつく。
まるで羽衣の様に揺れている。
「なに訳分かんねぇこと言ってんだよ、嬢ちゃん。」
フランジェがグレイシアに迫る。
大きく振りかざされた爪、それを容赦なくグレイシアに向けようとした時だった。
パキッ。
「……はっ?」
凍るはずのない雪柱石で出来たフランジェの爪が凍り付いたのだ。
フランジェはすぐ様腕を引く。
「おい、何をしやがった?」
フランジェの問いにグレイシアはくすりと笑う。
「これが私のギフト『アイスドール=揺れ動く物=』よ。」
その時、フランジェはグレイシアを覆う冷気が線であることに気付いた。
凍った粒子が漂っているわけではなく、それら一本一本がグレイシアの腕から伸びていたのだ。



