ドンドンドン!

ケーキを待つグレイシアの部屋に突如鳴り響いたノック。

「入りなさい。」

グレイシアはその人物を招き入れる。

入ってきた白髪の男性が、入るなり跪(ひざまづ)く。

「どうしたのウォーリー?」

「はい。たった今、西方のリンカ村が野党に襲われたとの情報が入りました。」

「西方警務隊は?」

目付きの変わったグレイシア。

そこに幼さは欠片ほども見られない。

「今、リンカ周辺は部分的に吹雪に見舞われ警務隊が動けない状態にあります。更に野党は、あのフランジェ率いる"白狼"である可能性が高いとのことです。」

「フランジェ……ブラックリスト入りの享楽殺人者じゃない。」

険しくなるグレイシアの顔。

「はい。ここは女王直々に足をお運び頂くことはできませんでしょうか?」

そうウォーリーが聞いた時にはすでに、グレイシアは羽織をはおっていた。

「無論よ。すぐに出るわ。あなたも用意なさいウォーリー。」

「はっ。」