「オリエッタ様、王子の稽古はまだ終わってません。」

見張りの家来の言葉も届かぬように、王の財力を活用した華美な装飾で闘技場に侵入する。


「王子、こんな何処の身分も知れない動物と戯れるなんて、悪趣味ですわね。まあ、王の御意思でしたら反論も出来ませんけれど、ほほ……」

ヒバリの第一子である王子が居ることで、オリエッタの子供が跡継ぎになれないのを気に入らないのだ。
彼女の大袈裟に煽る扇子が手からこぼれ落ちた。

ビキはそれを地上に落ちる前に拾い上げ、いつものように、稽古を始めた。
王子もそれに続く。

オリエッタの取り巻く家来は退いてゆき、彼女を中心に二人は的のように舞う。

引き攣りながら、オリエッタはその場で硬直している。
ビキは扇子だが確実に人を殺める気迫で、王子は斬られたら確実に傷になる模造刀で、囲んでいるのだ。

ビキは正面から、王子は背後から、オリエッタの首を狙った。