「夏希ちゃん…?」
「聖也くん…私先に行くねっ」
「あ、送って行くよ」
「ううん!!いいよ…じゃ、また明日ね」
ひきつる頬、笑顔を無理やり作って言うと走ってその場を後にした。
不自然な笑顔じゃなかったよね?
もっと速く走れ!
もっと、速く!
もっと…
「夏希、俺は大丈夫だから。歩けよ…」
幸信の言葉に私は少しずつスピードを緩め、立ち止まった。
乱れた息。
胸が苦しい…
乱れた息のせいじゃなく、聖也くんの何気ない言葉が凄く重く感じる。
──幽霊でもいたりして!
「……っ……」
私は手で顔を覆い隠し、声をできるだけ殺して泣いた。
…何で私が泣くの?
辛いのは、幸信の方なのに───
わかるよ…
感触がなくても、感じる。
幸信の温もりを……
「あ…ありが…とう」
私は震えた声で、私の頭を撫でてくれている幸信に言った。
手で顔を隠して視界が真っ暗でも、
幸信の感触がなくても、
わかるよ───



